テシゴト・テアソビ。播州織に魅せられて。

播州織と私のストーリー これまで・これから

Q.大塚さんと播州織の出会いを教えてください
糸を前にデッサンしてイメージを固める大塚さん

タテ糸、ヨコ糸の組合せで柄を作る播州織。糸を前にデッサンしてイメージを固めるのがいつものスタイル

大塚:もともと天然素材のテキスタイルを使った服づくりをしていたのですが、神戸で開催された地場産展に出展していた播州織を見て「これだ!」と思いました(笑)。当時、私の取引先には鮮やかな色みの天然素材が少なく、どこか満足できていない自分がいました。初めて播州織に触れたとき、こんなきれいな色のテキスタイルがあったんだとびっくり。しかも兵庫県で織られているなんて…。

 そのときに播州織職人の西角博文(にしかくひろふみ)さんに出会ったのも大きかったですね。かつて全世界を商圏し、巨大織物産地として隆盛を極めた西脇地域。年々その生産量は減少していましたが、当時はまだ危機感を持つ工場は少なく、独自の制作をしたり、若いクリエイターを育てなければと考える職人は西角さんぐらいでした。新しいものを生み出したいと考えていた職人とクリエイター、この偶然の出会いが、niki*の播州織の原点ですね。

Q.大塚さんのブランド名
   (Banshu-ori+pop)× niki*に込められた想いは?
糸を前にデッサンしてイメージを固める大塚さん

今期の新作ストール。抑えた色使いの中にも品の良さ、可愛らしさを感じるのも大塚さんらしい

大塚:播州織は綿を主体とした先染織物(さきぞめおりもの)で、起源は1792年(寛政4年)、京都の西陣織の技術がこの地域に導入されたのが始まりと言われています。先染織物とはまず先に糸を染め、いろいろな色に染まった糸でチェックやストライプなどさまざま柄を織りあげていく手法です。得意とするのはシャツやシーツに使われるような薄手のコットン素材。

 2009年春、私は、まずジャカードやボーダー、アレンジワインダーなど、それまで制作したオリジナルの播州織を集めた播州織展示会を西脇で開催しました。すると「若いクリエイターが何かおもしろいことをやってる」と、展示会にはたくさんの職人さんや機屋さんが訪れてくれ、今もその時の出会いが、私のものづくりを支えてくれています。そしてコットン本来の軽さを再現したストールが生まれ、後にストール同様、余計な加工を施さないという方法での服地づくりへと繋がっていったのです。

 現在も西脇には、220を超える機織工房があり、900人以上の職人さんが現役で働いています。これからも産地の職人さんたちと直に話すことで、生まれてくるものを大事にしたい。播州産地が得意とする技術を生かしつつ、アイデアとデザインを組み合わせたものづくりをしていきたい。それが、私の作る(Banshu-ori+pop)× niki*です。

※アレンジワインダー…アレンジワインダーとは、播州織産地で開発された技法の一つで、さまざまな糸を繫ぎ合わせて1本の糸を作る技術です。よく見ると所々に糸の結び目が見えるのも特徴の一つです。

Q.新作が次々とできていますね。
 今度はどんな作品ですか?
ウロコ柄の新作を広げる大塚さん

コロンとした円の連なりがかわいいウロコ柄は、織り組織による色の濃淡を生かした自信作。播州織の独自技法アレンジワインダーも使い個性的に

糸を前にデッサンしてイメージを固める大塚さん

(Banshu-ori+pop)×niki*のオリジナルUroco(ウロコ)柄

大塚:産地で育まれ受け継がれる播州織本来の魅力と、動き始めた可能性を新たな価値に変え、伝いたい─。日々、そんな想いで活動していますが、今回、その産地で新たな出会いがあったんです。それが藤祐繊維(株)の藤原さん。「うちの力織機で何かコラボできないか」。そんなオーダーをもらって工房を訪ねると、半世紀以上も前の織機が。現在では日本全国を探してもほとんど見られなくなってしまった稀少な織機がそこにあったんです。ジャガードのカラミ織ができると聞いて、胸が高鳴りました。早速、デッサンをあげて出来たのがったのが、コロンとした円の連なりがかわいいウロコ柄の生地。2012年秋の新作です。これは、糸の密度の変化によって形が変わることを想定して出来上がったデザインで、季節によって糸を変えたり、色の濃淡を変えたりなどバリエーション展開もおもしろいと思います。

〈大塚さんとお話をして〉

作り出す作品のイメージと同様、女性らしくてかわいらしい雰囲気の大塚さん。それは、初めてお会いした8年前とちっとも変わっていません。実は、藤祐繊維(株)の藤原さんとのコラボで誕生したウロコ柄のストール、ゲットしました。コロンとした円がかわいいのはもちろん、肌に当たっても柔らかで心地いい。アレルギー体質の私にも安心です。 「産地に頻繁に通うことで、テキスタイルを立体的に考えられるようになったんですよ」と話してくれた大塚さん。職人さんと話す度にアイデアが浮かんで、仕事が楽しくて仕方がないとも。こんなのもできるんじゃないか、あんなのもできるんじゃないかと…。これからも大塚さんと播州織から目が離せませんよ〜。
(ライターY:2012年8月31日 取材 )